平成30年1月13日(土)、第32回プロゼミが開催されました。
今回は、いわゆる「岩瀬事件」をテーマに討論を行いました。
租税回避事例としてつとに有名なこの事件では、「私法上の法律構成による否認論」を主張する国税側の主張が地裁において採用され、高裁において排斥されています。裁判官の行う契約の解釈に働きかける「私法上の法律構成による否認論」は果たして妥当な主張なのか。実質課税の原則の焼き直しであると批判されることもありますが、他方で、事実認定の手法として正当なものであるとの意見もあります。
今回も発表班・質問班・司会班・ジャッジ班に分かれ議論が交わされました。
【参考】第32回プロゼミチラシ
平成29年12月9日、第31回プロゼミが開催されました。
今回は、いわゆる「金属マンガン事件」を題材に討論を行いました。
租税法の条文を解釈適用するときには、厳格な解釈が要請されるといわれます。租税法が財産権の侵害規範であるからだと説明されることもしばしばです。もっとも、実定法に従って、厳格な解釈をしようにも、条文に使用されている用語(概念)の意義が明らかでないことも珍しくはありません。概念を理解するのにあたって、他の法律関係で使用されている用語の場合には、その法律で使用されているのと同じ意義として理解すべきといわれますが、その概念が科学分野で使用されている概念であった場合はどのように考えるべきなのか、発表班・質問班・司会班・ジャッジ班に分かれ議論が交わされました。
今回取り上げる事件は、いわゆる「PL農場事件」です。
法人税法22条2項にいう益金に算入されるべき「収益の額」と寄附金課税との関わりについては、学説上の対立もあり、理論的には極めて重要な論点でもあります。
今回は、低額譲渡が義務付けられた土地の譲渡に関する益金課税問題と寄附金との関係について争われた「PL農場事件」を素材に、議論をしたいと思います。
法人税法37条は同法22条の「別段の定め」だと理解されていますが、そこで、「限定説」に立つべきか、あるいは「無限定説」に立つべきか、発表班・質問班・司会班・ジャッジ班に分かれ、活発な議論がなされました。
平成29年10月21日(土)、第29回プロゼミが開催されました。
今回は、消費税法上つとに有名な、いわゆる「歯科技工士事件」を取り上げディスカッションを行いました。
消費税法上の簡易課税制度の適用において、「サービス業」とはいかなる業種を指すのでしょうか。日本産業分類に従うと考えるべきなのか、あるいは、消費税法から独自の解釈を導出すべきなのか、各班に分かれ討論を行いました。
実務的にも極めて関心の高い論点ということもあり非常に盛り上がった議論が展開されました。
2017年9月9日(土)、第62回租税法研究会・第28回プロゼミ・第20回研究ゼミが開催されました。
第62回租税法研究会では、重加算税賦課要件である「隠ぺい・仮装」をテーマとして取り上げました。租税訴訟において重加算税賦課の妥当性が争われるケースが多い中、いかなる事実が重加算税賦課の構成要件となるかについて、要件事実の認定に関する問題を検討しました。
第1部では、法人が有する代表者に対する債権に係る貸倒れの事案において、法人と代表者との間の取引認定が問題となったケースを取り上げるとともに、第2部では、相続税において「隠ぺい・仮装」が争点となった事案を学びました。税務調査の際に香典メモを破棄したことが、果たして重加算税賦課要件を充足するのか、各テーブルから様々な意見が発表されました。
第28回プロゼミでは、いわゆる「上野事件」を取り上げました。
相続税の課税対象となる課税財産の範囲を巡る訴訟のうちでも、極めて注目度の高い事案です。相続の開始時において、必ずしも財産としての明確性を有していないものは多々あります。例えば、配当期待権を課税財産に取込むとする考え方は妥当なのでしょうか。あるいは、訴訟における勝訴の可能性をも織り込んだ財産評価というものを考えることは、相続税の課税対象や同法22条の「時価」の解釈において如何なる意味を有するのでしょうか。評価の困難性は相続財産性を否定することになるのか検討を加えました。
なお、第20回研究ゼミでは、共同執筆書籍の進行状況につき、各会員から研究テーマの発表がなされました。研究ゼミ会員以外の方にも聴講していただき、書籍化に向けてさらなるブラッシュアップが図れたのではないでしょうか。
2017年7月15日(土)、第61回租税法研究会・第27回プロゼミ・第19回研究ゼミが開催されました。
第61回租税法研究会第1部では、理事長の地位にあった者が社団からの借入金債務の免除を受けることにより得た利益が所得税法28条1項にいう賞与に当たるとされた事例―最高裁平成27年10月8日第一小法廷判決―について研究員から発表がなされました。役員賞与についての問題は実務上も大変興味深い論点かと思われます。
また、第2部では、財産分与としてされた不動産の譲渡につき譲渡所得課税の対象となるとされた事例―最高裁昭和50年5月27日第三小法廷判決―を参考に検討が加えられました。財産分与としてされた不動産の譲渡につき譲渡所得課税がなされることは、実務上もはや当然のこととして取り扱われているかと思われますが、なぜ譲渡所得課税の対象になるのか、そこに疑問を差し込む余地はないのかなど、実務を裏付ける理論的根拠について学びました。
第27回プロゼミでは、商品の輸出取引における収益計上時期が争われたいわゆる大竹貿易事件(最高裁平成5年11月25日第一小法廷判決)を基にディベートが行われました。法人税法上の権利確定主義について述べた同最高裁判決を改めて討論の対象とすることで、一層のアウトプットの充実を図ります。
第19回研究ゼミでは、共同執筆書籍『通達のチェックポイント〔所所得税法編〕』の発刊に向けて一つ一つ各自の担当事案の整理を行っています。次回第20回では中間報告会を開催いたします。
2017年6月17日(土)、第60回租税法研究会・第26回プロゼミ・第18回研究ゼミが開催されました。
第60回租税法研究会第1部では、航空機リース事業の終了に伴い民法上の組合員が受けた債務免除益が一時所得に該当するとされた事例―東京高裁平成28年2月17日判決―について研究員より発表がなされ、民法上の組合形式を使ったスキーム事案について幅広い意見と議論が加えられました。
また、第2部では、外国子会社のペーパーカンパニーと実質所得者課税の原則の適用―横浜地裁平成13年10月10日判決―として、法律的帰属説と経済的帰属説といった学問的な関心を実務に活かすべく事例検討がなされました。
第26回プロゼミでは、いわゆるストックオプション訴訟(最高裁平成17年1月25日第三小法廷判決)を基に、新しいスタイルでのプロゼミがスタートしました。
従来のプロゼミの、「研究員からの発表とそれに対する意見・質問」というスタイルを改め、「発表班・質問班・司会班・ジャッジ班」の4チームに分かれて討論するスタイルへとプロゼミがリニューアルされました。
自分の意見をただ主張するのではなく、発表班や質問班は、あらかじめ納税者側・課税庁側に分かれての立論を行い、ジャッジ班は裁判官のように両者の主張を汲んだうえでジャッジメントを下します。司会班は、随時飛び交う意見を簡潔にまとめ進行をする等、より応用力を鍛えることを目的としたスタイルとなっています。
2017年4月8日(土)、第59回租税法研究会・第17回プロゼミ・第25回研究ゼミが開催されました。
第59回租税法研究会(スタンダードコース)では、第1部に、商品券購入のための費用は交際費等として損金の額に算入されるかが争われた事例―東京地裁平成27年9月9日判決―について、研究員より発表がなされました。実務上の注目度も高い交際費等の範囲について活発な意見交換が行われました。
第2部では、公正証書があったとしても贈与税の負担回避のために作成されたと認められるときは、登記手続のときに贈与による財産取得があったと判断された事例―名古屋高裁平成10年12月25日判決―を基にディスカッションがなされ、酒井教授より解説が加えられました。
第25回プロゼミでは、相続税の事案において、重加算税の賦課が否定された事例を素材として、国税通則法68条にいう隠ぺい又は仮装の認定の是非につき、検討が加えられました。
重加算税の賦課要件は、国税通則法68条に申告書提出以前に「隠ぺい又は仮装」が必要である旨が規定されているところ、法定申告期限後の税務調査において虚偽答弁等を行った場合に「隠ぺい又は仮装」があったといえるか否かについては議論があるところです。国税庁の通達においては、そのような場合でも重加算税が賦課される余地がある旨が示されていますが、相続人の間で税務調査に対し積極的には協力しない旨の漠然とした合意が形成されていた場合に重加算税の課される得るのかについて議論を加えています。
第17回研究ゼミでは、来春発刊予定の共同執筆書籍『通達のチェックポイント〔所得税編〕』に向けて、各自の担当事案の整理等がなされました。
平成29年1月7日(土)、第24回プロゼミが開催されました。
今回は、役員退職慰労金の一部として土地を帳簿価額で譲渡した場合において、時価との差額が旧法人税法36条にいう損金経理をしなかった金額に該当するとされた事例―最高裁平成10年 6月12日第二小法廷判決―について、会員から発表がなされました。
役員給与については、平成18年度税制改正によって大きく改正されたところではありますが、賞与的性格を有するという点そのものは現在においても変わりありません。役員給与の性格が変わらない以上、たとえ法改正がなされたとしても過去の判例をないがしろにすることは到底できません。今回は退職慰労金の一部として現物支給した土地の時価と帳簿価額の差額について「損金経理」がなされていないとされた事例を検討しました。本件を通じて、役員給与の理解はもちろんのこと、法人の恣意性を排除するものとして用意されている「損金経理」についても考察がなされました。
平成28年12月10日(土)、第23回プロゼミが開催されました。
今回は、小規模宅地の特例の適用を受けるためには、特例対象宅地等を取得した相続人ら全員の選択同意書を申告書に添付しなければならないとされた事例として、東京地裁平成28年7月22日判決を取り上げ、会員より発表がなされました。
相続税法における小規模宅地等の特例適用は、実務的に極めて大きな関心事項の一つかと思われます。メンバー同士で積極的な意見交換がなされました。