平成28年6月18日(土)に第49回租税法研究会が開催されました。
第一部では、「業績不振の子会社等の倒産防止のためにやむを得ず行われたものと認めることができないとして、債権放棄の額が寄附金の額に当たるとされた事例」、東京地裁平成27年2月24日判決についてファルクラム研究会員より発表がなされました。
タクシー業を営む株式会社Xは、帳簿上債務超過の状態が続いていた子会社の再建を目的として、同社に対して有する債権の放棄を決議しました。これに対し、国Yは、かかる債権放棄は、子会社の倒産を防止するためにやむを得ず行われたものと認められず、本件債権放棄が合理的なものであるとはいえないため、法人税法37条のいう寄附金の額に当たるとして更正処分を行いました。当該処分を不服としてXが提訴したものが本件事例です。すなわち、争点は、「本件債権放棄の額が法人税法37条にいう寄附金の額に該当するか否か」です。
子会社再建を目的とした債権放棄の損金計上が否認され寄附金課税をされる事例は多々ありますが、本件の特徴は、Xが本件債権放棄を行った理由の一つに、X自身の帳簿上、子会社に対する貸倒引当金を計上することによる財政状態の悪化、ひいては投資家からの信頼悪化を避けるという経営判断があったという点や、Xと共有する子会社の土地を時価評価すれば実質的には債務超過ではなかったという点などが挙げられます。
寄附金の性質については、様々な学説がありますが、そもそも法人税法37条7項は寄付金の額について、「寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。」と規定しています。
この条文をいかに読むかという法解釈上の議論、そして法人税基本通達9-4-2について法律上の根拠をどこに求めるかという問題など、同通達はもはや課税実務上当然の前提になっているようにも思えますが、改めて法的根拠について検討がなされました。
第二部では、「更正があるべきことを予知してされたものでないとき(通法65条5項)の意義―東京地裁平成24年9月25日判決―」を基に、各テーブルごとにディスカッションを行いました。
本件は、税務調査中に、ある特例適用に関する届出の提出を失念していたことに納税者自身が気付き、調査官がその届出が提出されていない事実に気が付く前に、自ら進んで修正申告を行った事案です。この場合に、過少申告加算税が賦課されるか否かが争点となっています。
過少申告加算税について、法人税法65条5項は「修正申告書の提出があった場合において、その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、適用しない。」とされています。
それでは、この点、調査予告通知から調査終了時までのどのタイミングをもって「更正の予知」というのでしょうか。グループ討論の結果、様々な意見が飛び交い、それぞれの見解について酒井代表からコメントがなされました。
なお、調査通知後から更正の予知前になされた修正申告にかかる過少申告加算税については、平成28年度税制改正により加重措置が講じられたところでもあり、租税実務に携わる会員の皆様におかれましては、実務に直結するとても興味深い論点であったのではないかと思います。