平成28年10月15日(土)、第21回プロゼミ研究会が開催されました。
今回は、ファルクラム租税法研究会会員より、法人税法132条の2にいう不当性要件が争われた事例として、いわゆるヤフー事件、最高裁平成28年2月29日判決(民集70巻2号242頁)についての報告がなされました。
従来の学説は、私法上の選択可能性を利用して課税要件の充足を免れ税負担の軽減を図る行為を租税回避として捉えてきたことから、「租税回避とは課税されないもの」と理解してきました。同族会社の行為計算否認を定めた法人税法132条もこうした従来の租税回避の理解をベースに整理がなされてきました。
他方で、複雑な組織再編が頻出する今日において、それら組織再編に対応するため、法人税法132条の2《組織再編成に係る行為又は計算の否認》が整備されてきましたが、同条については132条の枝番であると捉え、従来の132条と同様の理解をすべきか、はたまた、132条と132条の2はあくまでも異なる条文であるとして新たな解釈を展開する余地があるのかについて大変注目された事例です。
ヤフー事件は、課税要件の充足を図ることで税負担の軽減を図った事例であり、従来の租税回避の定義とは異なります。りそな銀行事件など、近年注目されるこうした租税法制度の濫用事例について様々な意見交換がなされました。