第19回プロゼミ研究会

プロゼミ19回1 プロゼミ19回2

平成28年7月9日(土)第19回プロゼミ研究会が行われました。

今回は、短期前払費用の金額が多額であり課税上弊害が生じるものと認められるので、法人税基本通達2-2-14《短期前払費用》により損金の額に算入することはできないとされた事例として、東京地裁平成17年1月13日判決(棄却)、東京高裁平成17年9月21日判決(控訴棄却)、最高裁平成18年11月24日第二小法廷判決(棄却・不受理)を取り上げ、研究員による発表が行われました。

短期前払費用の取扱いは、実務上決算対策などにおいて非常に多く利用され、税理士をはじめ多くの租税専門家に周知のものと思われますが、この短期前払費用の計上について法律的な根拠を考えるとき、大きな疑問にぶつかります。法人税法において短期前払費用の計上を直接認める規定はなく、通達においてその取扱いが認められているにすぎません。

通達は法律ではなく、あくまでも行政庁内部の上意下達の命令手段にすぎないことを踏まえれば、たとえ納税者に有利な取扱いであったとしても、法的根拠のない通達の定めをもって短期前払費用の計上根拠とすることはできません。
なお、当該通達に係る逐条解説によれば、短期前払費用の取扱いは、「重要性の原則に基づく経理処理」との説明がありますが、企業会計原則にいう重要性の原則を法人税法においても採用出来るのかという問題、さらに逐条解説には「課税上弊害がない場合」との説明も見受けられるところ、このような不明確な基準を課税所得の計算に持ち込むことの問題点などが検討されました。

その後、酒井克彦教授による解説、プロゼミ研究員によるディスカッションが行われました。
短期前払費用の取り扱いについては、租税実務上大変多く利用されていることから、税務実務での現状やその問題点等について様々な意見が交わされ、大変有意義な研究会となったものと思われます。