2020年12月12日(土)、第89回租税法研究会が開催されました。
今回は、「従業員の横領と重加算税-『納税者の隠蔽仮装』と同視すべきか?」と題し、大阪地裁令和元年11月7日判決を取り上げました(講師:酒井克彦代表)。
今回は役員等の役職者ではない一般の従業員が架空仕入を計上する方法で会社の金員を横領していた場合において、かかる架空仕入の計上に関して、会社に重加算税を賦課することの妥当性が争点です。
横領には隠蔽仮装がつきものですが、隠蔽仮装に基づいて過少申告をした場合には重加算税が賦課されます。重加算税を定める国税通則法68条は「納税者が隠蔽し、又は仮装し」としており、文理上は隠蔽仮装の行為主体が納税者本人である場合に限って重加算税が賦課されるようにも見受けられます。しかし、判例・通説はそのようには解しておらず、代表者以外の役員の不正のようなケースであっても「納税者本人の行為と同視」できるときには重加算税賦課を容認します。そこでは、法人の指揮監督系統や注意義務などがその根拠として論じられてきました。
さて、平場の肩書きのない従業員が、自らの私利私欲のための横領で隠蔽仮装を行っていた場合はどうでしょうか?横領の被害者でもある会社に重加算税を賦課すべきでしょうか?
会員からは多くの見解が示され、酒井教授から総括がなされました。