第51回租税法研究会

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平成28年9月17日(土)に第51回租税法研究会が開催されました。

今回は、質問検査の際に適時提示が可能なように態勢を整えて帳簿書類を保存していなかった場合には、青色申告承認取消事由に該当するとされた事例(最高裁平成17年3月10日第一小法廷判決・民集59巻2号379頁)について、研究員から発表がなされました。

本件は、法人税の青色申告の承認を受けていた株式会社X(原告)が、税務調査において帳簿書類の提示を求められたにもかかわらず、調査理由の不開示等を理由に帳簿書類の提示を拒み続けたことから、税務署長Y(被告)が、法人税法126条《青色申告法人の帳簿書類》1項に違反し、同法127条《青色申告の承認の取消し》1項1号に該当するとして、法人税に係る青色申告の承認取消処分を行ったこと、また、上記の帳簿等の不提示を理由に、消費税法30条《仕入れに係る消費税額の控除》7項に規定する「帳簿等を保存しない場合」に該当するとして、同条1項を適用せず、消費税の各課税期間の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を行ったことに対して、Xがその取消しを求めた事案です。

例えば、後者、消費税法30条7項は、同条第1項の仕入税額控除の規定において「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等…を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。」としており、帳簿の保存を仕入税額控除の要件としています。ここで問題となるのは、たしかに「保存」はしているが、税務調査の際にそれを一切提示しなかった場合に、同条7項のいう「保存しない場合」に該当し、仕入税額控除の適用が否定されるか否かです。

この点、同条項が帳簿保存義務を求めた趣旨に鑑みれば、税務調査の際に職員がその保存された帳簿等を適宜検査することを通じ、申告の正確性を確認し、ひいては適正公平な課税の実現を図るものであると考えることができるでしょう。要するに、たとえ物理的に「保存」がなされていたとしても、法の趣旨からすれば、仕入税額控除は否定されるべきとなりそうです。

他方で、文理解釈によれば、「保存」とは、あくまでも物理的な所持・保管をいうとの反論もあり得ましょう。「保存」という文言を忠実に解釈するとしたとき、その中に「帳簿の適宜掲示義務」まで読み込むことには無理があるとの意見もあるかもしれません。

本件は、消費税法の事例のみならず、上記のとおり法人税法上の青色申告の承認取消についても争われていますが、趣旨に着目した解釈と、忠実な文理解釈の対立が軸となっています。

研究員の発表のあと、ディスカッションが加えられ、酒井教授から適宜解説が加えられました。

なお、第二部では、いわゆるレーシングカー事件最高裁平成9年11月11日第三小法廷判決(集民186号15頁)について、ディスカッショングループごとに討論し、酒井教授からコメントおよび解説がなされました。物品税法の事案ではありますが、租税法において定義規定のない概念をどのように解するべきかという問題を検討するにあたりかかすことのできない事案です。

今回もお試し参加の方にもご参加いただき、大変充実した研究会になりました。