ファルクラムは平成22年5月15日から多くの研究会を開催しております。
最新の活動報告は以下よりご覧くださいませ。
平成27年度以前の活動一覧は「こちらからダウンロード」いただけます。
活動報告
最新の活動報告
第18回プロゼミ研究会
平成28年6月18日に第18回プロゼミ研究会が開催されました。
今回は、「子会社の資産状態が著しく悪化したことによる子会社株式の評価損の計上並びに役員給与及び使用人兼務役員に対する賞与について事前確定届出給与に該当するとしてした損金の計上がいずれも否認された事例」として国税不服審判所平成22年5月24日裁決を基に研究員より発表がなされました。
本件事例につきましては大きく分けて争点が2つあります。すなわち、1つは、評価損が計上された子会社株式について、子会社の資産状態が悪化したため、当該子会社株式の価額が著しく低下した事実が生じていたか否か。もう1つは、本件における役員給与が事前確定届出給与として損金の額に算入できるか否かです。
研究員による発表の後、プロゼミ研究員によりディスカッションがなされました。特に役員給与に関する論点につきましては、租税実務に直結する論点でもあることから、法解釈上の問題点と絡め、実務における現状やその課題等について様々な意見が飛び交いました。意見交換の中で新たな問題点が浮き彫りになってきたこともあり、非常に興味深いディスカッションになったのではないかと思います。
第49回租税法研究会
平成28年6月18日(土)に第49回租税法研究会が開催されました。
第一部では、「業績不振の子会社等の倒産防止のためにやむを得ず行われたものと認めることができないとして、債権放棄の額が寄附金の額に当たるとされた事例」、東京地裁平成27年2月24日判決についてファルクラム研究会員より発表がなされました。
タクシー業を営む株式会社Xは、帳簿上債務超過の状態が続いていた子会社の再建を目的として、同社に対して有する債権の放棄を決議しました。これに対し、国Yは、かかる債権放棄は、子会社の倒産を防止するためにやむを得ず行われたものと認められず、本件債権放棄が合理的なものであるとはいえないため、法人税法37条のいう寄附金の額に当たるとして更正処分を行いました。当該処分を不服としてXが提訴したものが本件事例です。すなわち、争点は、「本件債権放棄の額が法人税法37条にいう寄附金の額に該当するか否か」です。
子会社再建を目的とした債権放棄の損金計上が否認され寄附金課税をされる事例は多々ありますが、本件の特徴は、Xが本件債権放棄を行った理由の一つに、X自身の帳簿上、子会社に対する貸倒引当金を計上することによる財政状態の悪化、ひいては投資家からの信頼悪化を避けるという経営判断があったという点や、Xと共有する子会社の土地を時価評価すれば実質的には債務超過ではなかったという点などが挙げられます。
寄附金の性質については、様々な学説がありますが、そもそも法人税法37条7項は寄付金の額について、「寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。」と規定しています。
この条文をいかに読むかという法解釈上の議論、そして法人税基本通達9-4-2について法律上の根拠をどこに求めるかという問題など、同通達はもはや課税実務上当然の前提になっているようにも思えますが、改めて法的根拠について検討がなされました。
第二部では、「更正があるべきことを予知してされたものでないとき(通法65条5項)の意義―東京地裁平成24年9月25日判決―」を基に、各テーブルごとにディスカッションを行いました。
本件は、税務調査中に、ある特例適用に関する届出の提出を失念していたことに納税者自身が気付き、調査官がその届出が提出されていない事実に気が付く前に、自ら進んで修正申告を行った事案です。この場合に、過少申告加算税が賦課されるか否かが争点となっています。
過少申告加算税について、法人税法65条5項は「修正申告書の提出があった場合において、その提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、適用しない。」とされています。
それでは、この点、調査予告通知から調査終了時までのどのタイミングをもって「更正の予知」というのでしょうか。グループ討論の結果、様々な意見が飛び交い、それぞれの見解について酒井代表からコメントがなされました。
なお、調査通知後から更正の予知前になされた修正申告にかかる過少申告加算税については、平成28年度税制改正により加重措置が講じられたところでもあり、租税実務に携わる会員の皆様におかれましては、実務に直結するとても興味深い論点であったのではないかと思います。
第10回研究ゼミ
2016年度第一回公開セミナー
2016年6月2日(木)にホテルニューオータニの会場にて開催された公開セミナーの模様です。
今回のメインテーマは「加算税制度に関する重要論点」と致しまして、酒井代表から説明がなされました。
平成28年度税制改正のうち納税環境整備の一環として加重措置が新設された加算税制度ですが、税務調査の数が減少傾向にある今日において適正公平な課税を担保する制度として一定の期待が寄せられています。
第一部では「新たな加算税制度の重要論点―平成28年度改正などの概要と実務への影響を検討する―」と題し、資料情報収集制度の拡充と併せて、今後どのように加算税制度が進んでいくのか、また、それに伴う問題点や課題などについての解説がなされました。
続いて第二部は、「事例で学ぶ加算税制度」としまして、重加算税の賦課の有無について争われた国税不服審判所裁決を基に、租税専門家たる実務家として非常に興味深い事例を通じ小グループごとのディスカッションを行い、酒井教授より詳細な解説・コメントが加えられました。国税通則法の条文解釈を中心に様々な意見が飛び交いました。
なお、この度の公開セミナーには総勢50名を超える皆様にご参加いただき、そのうちファルクラム初参加の方も10名以上ご来場いただきました。この場をお借りし、感謝申し上げます。
第17回プロゼミ研究会
平成28年4月9日(土)に第17回プロゼミコースが開催されました。
第17回プロゼミ研究会では、研究会員より、いわゆる「自販機スキーム」と類似のスキームを利用して消費税の還付を受けた法人と、その経営者及びスキームを助言した者がそれぞれ消費税不正受還付罪に問われた刑事事件である、東京地裁平成27年3月16日判決及び東京高裁平成28年1月29日判決について研究発表がなされました。
刑事訴追の事件という普段とは一味違う事例を用いることで、改めて「事実認定の仕方」や、「偽りその他不正の行為」とは何か等の討論が行われました。
そもそも何故、自販機スキームというものが可能であったのかという根本的な問題からはじまり、消費税法における「事業」概念にまで討論が及びました。
第48回租税法研究会
平成28年4月9日(土)に租税法研究会(スタンダードコース)が行われました。
第一部は、租税法研究会員より、会員制リゾートクラブが入会時に収受した金員のうち、預託金以外の部分については不課税取引に該当するとされた事例、東京地裁平成26年2月18日判決について研究発表がされました。役務の提供や対価性、非課税取引といった消費税の基礎となる部分についても各研究員から様々な意見が出され、酒井教授からの解説も加えられました。
第二部では、大阪高裁平成16年9月29日判決を基にしたグループディスカッションが行われました。
自らを消費税の事業者であると仮装して還付申告を行った個人Xが、更正処分によりかかる還付金額の返還をすることになると共に、重加算税を課された事案が題材となっています。国税通則法68条の規定によれば、重加算税は「納税者」に対し課されるものですが、Xは事業者であると仮装していたにすぎず、「納税者」には該当しないようにも思われるところです。果たしてXは重加算税の対象となり得るのでしょうか。国税通則法をいかに解釈すべきかを検討しました。